なめくじキャサリン by 山田英治
なめくじキャサリンは、こどくでした。ほとんどとうめいに近い、白いカラダのせいで、
友だちができませんでした。みんな自分にきずかず通りすぎていってしまうからです。
そんなある日のこと、なめくじキャサリンは、みどり色のでんしゃにのってうみを見
に行くことにしました。青いうみをこの目でいちど見ておきたかったからです。
みどり色のでんしゃは、しずかなうみにつきました。はじめて見るうみはとても青く
て、まぶしくて、きれいでした。
なめくじキャサリンは、この青いうみが、まるでひさしぶりにあった友だちがりょう
てを広げてむかえてくれているように感じられました。「はーい、よくきたね」と。
なめくじキャサリンは、なんだかなつかしい気持ちになって、しずかにしずかにうみ
の中に入っていきました。そしてほとんどとうめいに近い、なめくじキャサリンの白い
カラダは、うみのしおによって、少しずつとけていきました。
でも、いたくもかゆくもありません。むしろうれしかったのです。自分のカラダが、
うつくしい青にそまっていくのが。
そしてちっちゃなちっちゃななめくじキャサリンは、大きくて青いうみになりました。